元ネタはメソポタミア神話であるが、この子に関しては少しワケアリである。
元々は地の底にあるといわれる「淡水の海」がアブズ(アプスーはアッカド語)と呼ばれており、
全知全能の神、エンキ(
エア)がこの世に顕現する前の故郷であるとされていた。
そのためか、神を祀る寺院に設置されていた地下水をくみ上げた井戸をアブズと呼んでおり、
地下から水が湧いてくるのは地下に淡水の海があるからだと信じられていた。
ついでに言うと、古代メソポタミアの都市エリドゥにあったエンキの寺院の名はエアブズ(エンキとアブズを合わせた名前)である。
……そう、
アプスーは本来神様ではないのである。
むしろエンキ(
エア)こそがアブズ、アプスーそのものの化身と見る趣が強かった事がうかがえる。
実は現在、明確な神としてのアプスーはバビロニアの天地開闢神話、エヌマ・エリシュにしか存在がない。
エヌマ・エリシュは、「天に名前がなく地に名前がなかったころ」、から序文が始まりその次に、
「この世には初めに淡水があり、アプスーがいた。彼こそ第一の者であり万物の父」、と続くのである。
なんとびっくり、
生命を操るどころか、世界の始まりの存在である。
そして全ての命の母、塩水から生まれた女神
ティアマトを伴侶とし、互いに水をかき混ぜあっていた、とされる。
神姫となった彼女が、体の成長が止まりながらもみんなのママを彷彿とさせる豊満さをたたえるのもご納得いただけるだろう。
しかしその後エヌマ・エリシュでは、
天地開闢以後に現れた若き神々に安眠妨害されたアプスーが神々を滅ぼそうとしたため、
エンキ(
エア)がアプスーを魔法で眠らせ、地下の淡水の海(つまりアブズ)に還して鎮め、
アプスーからその淡水や繁殖を司る神の力を受け継いだ、と続くのである。
これはエヌマ・エリシュ自体にも当然ながら当時の政治的意図が含まれており、
それ以前の信仰をやんわりと変節させていくためにそうした、と考えられるものである。
それにしてもゲーム中の彼女の生命を操る力が、
このエヌマ・エリシュの中でエンキ(
エア)に受け継がれた繁殖の力であるとすれば、
一発でご懐にn